みなさんハイパーインフレーションをご存知ですか?
ハイパーインフレーションとは?
物の価値>お金の価値 となったときにインフレが起き、それが行きすぎるとハイパーインフレーションとなります。ハイパーインフレは具体的に「インフレ率が毎月50%を超えること」と経済学者によって定義されています。
これは、缶コーヒー1缶が
となるに相当します。
[voice icon="https://hikitaro.com/wp-content/uploads/2019/06/40089718.2b41005ba0d1899a3f0bf130c1f85933.19060315-1-e1561226485604.jpg" name=“ユウガ” type="l"]1年で缶コーヒーの価格は100倍以上になっている。。。[/voice]
物価がものすごい勢いで上がるのと同時に、お金の価値もそれと同じ勢いで下がっています。
ハイパーインフレーションの原因
- お金を刷りすぎた。
- 総需要が上がりすぎた。
- 総供給能力が下がりすぎた。
物の価値>お金の価値 となったときにインフレが起き、それが行きすぎるとハイパーインフレが起こる。そして物の価値とお金の価値は需要と供給のバランスによって決まります。これを踏まえて、ハイパーインフレの原因となる、3つのケースを見ていきましょう。
①お金を刷りすぎた
お金をたくさん刷ると、お金の価値が下がります。これは需要と供給の関係からわかります。お金の価値が下がり、物の価値とお金の価値の差が広くなり続ける、やがてハイパーインフレ状態になってしまいます。
②総需要が上がりすぎた
ここで総需要とは世の中にある全ての需要。車や家から食料品、教育サービスまで。全てのものの需要が上がると、やがて供給が追いつかなくなり、物の価値が上がります。これが続くと物の価値とお金の価値の差が広くなり続け、やがてハイパーインフレとなります。
③供給能力が下がりすぎた
ものを作る能力(=供給能力)が下がると品不足が起こります。これは工場が壊れてしまったり、疫病が流行したりしたときに起こります。供給能力が下がると、物の価値が上がり、これが続くと物の価値とお金の価値の差が広くなり続け、やがてハイパーインフレとなります。
ハイパーインフレランキング ベスト3
ここからは過去に起こったハイパーインフレーションのうち、「1日あたりのインフレーション率」が高い、上位3国を「原因・背景」「影響」「その後」とともに紹介していきます。
第1位 ハンガリー 207% (1日あたり)
ハンガリーでは1945年から1946年にかけて、ハイパーインフレが起こりました。その1日あたりの平均インフレ率207%。100円だった缶コーヒーが翌日には300円。そしてその次の日には900円に。。。
さらに最高インフレ率は1日あたり150,000%!ある日の朝に100円だった缶コーヒーが夜には15万以上に。。。
ハンガリーは第二次世界大戦の際に、ロシアとドイツの戦場となります。これによって、工場や畑が破壊され、供給能力が激減。さらに、汽車や線路といった輸送手段も破壊されしまい、品不足。物価上昇が進みます。
これに対し、「政府は経済を活気づける」「人びとを安心させる」という理由で、お金をたくさん刷り始めます。当時使われていたハンガリーの通貨(ペンゴ)の流通量は、1945年から1946年の1年間で、25億ペンゴ→1(じょ)ペンゴと400兆倍になっています。
直感的には、「物価が上がるっているから、お金をばらまいて、みんなが買えるようにする」というのは理にかなっているように思えます。しかし、物価はお金の量に連動していて、お金の量が増えるほど物価はさらに上がり、ハイパーインフレとなりました。
ハイパーインフレになって、お金が紙クズ同然に。そんなとき政府がとった行動は。「もっと大きい単位の紙幣を作る」ことです。実際に、1,000,000ペンゴ札や1,000,000,000,000ペンゴ札が発行され、その後は新しい通貨「フォリント」に置き換えられました。
ハンガリーで発行された1京ペンゲ紙幣
このインフレーションによって、労働者の給料は80%カットされてしまいましたが、一方生産能力を高めたり、インフラが整備されたりといった効果もあったんだそう。これは、お金の価値が下がりことによって、人々がとにかく何か作り、自分たちの資産の価値が下がるのを防いだ結果と言えます。
第2位 ジンバブエ 98% (1日あたり)
ジンバブエはアフリカ南部に位置する国。長い間、白人によって支配されていましたが、その後2000年に独立を果たします。しかし、その直後にはハイパーインフレ。。。1日あたりインフレ率は98%。
独立後の総選挙で、黒人大統領ムガベが誕生。その後は白人が所有していた土地を奪い、黒人に分配するなど、独裁的な政治をします。これまで、農産物の生産は白人が担っていたのですが、白人は土地を奪われたことにより、自国へ帰国。黒人には農産物を作るノウハウがなかったため、食糧不足が起こりました。これにより、供給能力が下がり、ジンバブエの通貨(ジンバブエドル)は暴落、ハイパーインフレ状態となりました。
その後、物価は天文学的な数字に。これはやばいと思った大統領は「インフレ禁止令」を出します。これは文字通り、値上げすることを禁止する法律です。いくらお金の価値が下がっても、商品を値上げしてはいけない。これにより、企業は利益を出すことができなくなり、倒産。失業率は98%を超えてしまいました。
すっかり価値をなくしたジンバブエドルは廃止、回収されました。その後は、ドルやユーロなどの通貨を取引に使うこととなりました。
第3位 ユーゴスラビア 64.6% (1日あたり)
ユーゴスラビアとは、かつてヨーロッパのバルカン半島に位置していた国。1日はあたりのインフレ率は64.6%。
当時ユーゴスラビアでは内戦が発生、工場やインフラは壊され、供給不足が起こります。その後、政府はそれらを再建しようとお金をたくさん刷りはじめます。それにより当時使われていた通貨「ディナール」価値が暴落。ハイパーインフレ状態となります。その後政府は、ジンバブエと同じよう、価格統制を行います。これにより、生産者はものを作るのを止め、さらに供給不足。。。
その後政府は「新しいディナール」を作ることによって、インフレを止めようとしました。新しい1ディール=古い10億ディナールと交換としました。このように、通貨の単位を切り上げたり、下げたりすることを、デノミネーションといいます。
ユーゴスラビアがボスニア・ヘルツェゴビナに変わると、兌換(だかん)マルクといった通貨が使われ始めました。兌換とは交換するという意味で、ドイツマルク(当時ドイツで使われていた通貨)との固定レートでの交換を保障した通貨となりました。ドイツマルク廃止後は、ユーロとの固定レートとなりました。現在も「1兌換マルク = 0.51129ユーロ」の固定レートで取引されています。
番外編 有名なハイパーインフレ
ここからは、ランキング外でありながら、有名なハイパーインフレーションの例を見てきます。
ドイツ
ハイパーインフレ=ドイツを思い浮かべる方も多いかと思います。ドイツのハイパーインフレの原因はお金の刷りすぎ。第一次世界大戦で負けたドイツは多額の賠償金の支払いを命じられました。ドイツ政府は資金調達のためお金をたくさん刷り、ハイパーインフレとなりました。
ベネズエラ
ベネズエラでのハイパーインフレは現在進行形であるため、知っているという方も多いかと思います。ことの発端は2015年の原油価格急落。輸出の9割が原油であった、ベネズエラの経済は、大きな打撃を受けます。 ベネズエラでは、産業のほとんどが原油、他の商品は輸入に頼っていました。原油が今まで通りの値段で売れなくなったため、他の商品を輸入するお金がなくなり、結果品不足。ハイパーインフレーション状態となりました。それと同時に治安は悪化し、首都のカラカスは世界で一番治安の悪い都市と言われています。
日本
日本でも、ハイパーインフレとまではいきませんでしたが、激しいインフレが起こったことがあります。これは「狂乱価格」とも呼ばれるものです。第二次世界大戦後に起こったこの「狂乱価格」は列島改造と第一次石油危機が原因。列島改造では、日本中に高速道路や新幹線が整備され、土地の価格が上昇。また中東での戦争により、石油が不足(第一次石油危機)。石油製品の価格が上昇し、それに便乗して他の商品の価格も上昇しました。
ハイパーインフレ 防ぐには?
ここまでハイパーインフレが起こった国を見ていきました。これらの国に共通するものは
ということです。戦争や革命、独立といった社会が大きく変わるとき、人々は判断を誤ります。これは過去に経験をしたことがないからです。
具体的な防止策
ジンバブエのような政府の暴走によるハイパーインフレーションは、権力を分散させることによって防ぐことが可能であると考えます。
しかし、ベネスエラの石油価格や、ユーゴスラビアの内戦といったケースに関しては、どのように対策できるでしょうか。ボクは他国による物資の支援が有効であると考えます。
これらのハイパーインフレは「供給能力>需要」によって起こるもの。この差を縮めるために他の国が生活必需品を支援し、物不足を緩和させるということです。 ベネズエラでは、実際にアメリカ政府が、支援物資を支給しようとしましたが、独裁政権がこれを拒否するといったことも、起きています。国際的な協力とそれを受け入れることができる政治体制の両方が必要ということです。
アフター・コロナ時代とハイパーインフレ
ドイツのように、賠償金の支払いにより、ハイパーインフレを起こすというケース。これは請求国が、返済の猶予を設けることによって、防ぐことができると考えています。
現在、コロナウイルスに関する情報を共有せず、感染拡大を起こしたとして、中国が、アメリカなどに訴えられるといった事態が、起こっています。その賠償請求は1京円を超えるまでに。 中国が、この賠償金を払うことになれば、中国の通貨「人民元」は、暴落を起こすでしょう。これにより、中国の供給能力が下がってしまうと、世界経済は大きな影響を受けます。
アフター・コロナの時代、中国に責任追求すること自体は、大切だと思います。しかし、感情的になるのではなく、その後のことを考えた判断が経済への影響を最小限にする鍵となると考えます。