【MMT理論】今ホットな現代貨幣理論って何?【政府は好きなだけお金を借りれる?】

MMT理論とは、Modern Monetary policy (現代貨幣理論)の略で、経済学の根底を揺るがしかねない理論として、注目されています。

MMT理論の軸は、

  • 政府は借金をしまくってよい
  • 経済が冷え込んだときには、政府がお金をばら撒くべき

初見だと暴論のように思われるかもしれません。借金を踏み倒せば、財政破綻してしまうし、誰もお金を貸してくれなくなります。しかし、この記事を読めば、なるほどこういう理論もあるのかと納得していただけるかと思います。

コロナウイルスの影響で、売り上げが大幅に減少した企業がたくさんがあるかと思います。この理論がもし正しいならば、

「企業の売り上げ減少を、全て国が補償する」

といったことが、可能になります。従来の経済学では「そんなことしたら、お金の流通量が増えすぎて、ハイパーインフレーションを引き起こす」と考えますが、MMTでは、「インフレ率はコントロール可能である」と考えます。

このようなことから、MMTはいま最もホットな経済理論の一つであるということができます。MMTの真偽で今後の世界経済が大きく変わる可能性があります。

ここからは、MMTを少し厳密に定義して、従来の経済学との比較、理論を裏付ける証拠について紹介していきます。

MMT理論①:自国通貨建てのの政府債務は返済不要

MMTの軸=政府は借金をしまくってよい」ですが、厳密には自国通貨で政府が借りた借金のことを指します。日本では円、アメリカではドルで借金をしまくることができるということです。しかし、これは直感に反します。「借りたお金は返さないといけない」これは常識のように思えます。

「政府」と「私たち」は大きく異なる:政府には通貨発行権

私たち、一般市民は借りたお金は返さないといけません。返さなければ、裁判になったり、財産を差し押さえられたりしてしまいます。しかし、政府は一般市民と通貨発行権があるという点で大きく異なります。通貨発行権とは「お金を作ることができる権利」。日本政府は、

  1. 国債日本銀行に買い取ってもらう。
  2. 硬貨を発行する。

の2つの方法で通貨を発行することができます。

国債というのは政府の借金のことで、日本銀行国債を買い取る」ことは「政府が日本銀行に借金をする」ということになります。日本銀行は政府の子会社なので、政府は借りたいだけお金を借りることができます。さらに日本銀行は、紙幣を作ることができる特別な銀行なので、日本銀行がこれ以上お金がないから貸せないということは起こりません。

さらに、政府には10円玉や100円玉といった硬貨を発行することができる権利もあります。

Tip① (日本銀行)
  • 紙幣を作ることができる
  • 政府の国債を買いまくることができる
  • 日本政府の子会社

MMT理論②:無限にお金を借りていいわけでわない:インフレの制約

政府は借金をしまくってよい。これは正しいのですが、1つだけ制約があります。それはインフレーションです。

インフレーション: 物の価値>お金の価値 となる現象。

物の価値とお金の価値の差が大きくなりすぎると、ハイパーインフレーションといわれる状態に陥り、お金が紙くず同然になってしまいます。

価値がほとんどなくなった紙幣で遊ぶ子供たち。

インフレーションの仕組み

物の価値>お金の価値 となるのは、総需要が、総供給能力を超える>とき。つまり、品不足のときです。国民に一律1億円を給付することを仮定します。人々は宝石やブランド品など高価なものを買い始めるでしょう。しかし、みんな1億円を持っているので、すぐに品不足になってしまいます。それにつれて、「物の価値」と「お金の価値」の差がどんどん広がり、やがてお金は紙くず同然になってしまいます。

以上より、政府がお金を借りることができる上限は、インフレーションまたは、総供給能力に依存します。政府はちょうどいいインフレーション率を保てる範囲では、お金を借りまくれるということです。

Tip②
  • 需要>供給能力 →  物の価値>お金の価値 (インフレーション)
  • 供給能力>需要 → お金の価値>物の価値  (デフレーション

ちょうどいいインフレーション率

多くの政府がイングレーション率(=物価の上昇率)を2%に設定しています。これは過去の経験則より、経済を発展させるのにちょうどいいとされているからです。

MMT理論③:財政拡大

経済が冷え込んこみ、人々がお金を使わずに商品が余ってるときには、財政拡大が有効であると言えます。政府は、インフレ率と供給能力の制約の中、お金を借りまくることができるというのを①②で説明していきました。

ここで、経済が冷え込むというのは、お金の価値>物の価値となって消費が落ち込むことを意味します。このとき商品は余るので、供給能力>需要 となります。すると、企業は商品の生産量を減らし、それにともない失業者が出て、それによってさらに消費が落ち込んで。。。といった具合に負の連鎖が始まります。

MMT理論はこのような状況では、「財政拡大」が有効であると考えます。財政拡大には、国民に手当などといった形で「お金を配る」方法と、公共事業などによって「需要を作る」方法の2つがあります。

国民にお金を配る

  • 消費の落ち込みで。売り上げを大幅に減少させた企業に支給される手当
  • 消費を促すために、国民へ一律10万円支給する

需要を作る

  • 高速道路を建設する
  • 小中学校にタブレットを配布する

「お金を配る」「需要を作る」の2つによって、

収入増える→商品を多く買う(消費を増やす)→他の人の収入が増える→他の人が消費を増やす...

のように、今度は正の連鎖が起こります。

MMTによる新しい財政拡大の形:就労保障プログラム

先ほど紹介した2つの財政拡大については、すでに多くの国が取り組んでてて、特段目新しいものではありません。しかしこの「就労保障プログラム」MMT独自の財政拡大の方法です。

就労保障プログラム:失業者全員を国で雇う政策

不況時には、消費が落ち込み、失業者がでます。失業者はお金を使わなくなり、さらに消費が落ち込みます。このプログラムはそんなときに、失業者を雇い、公共事業の担い手にします。景気が好況になると、労働者たちはこのプログラムで得たスキルを武器に民間企業へと就職することができます。失業者の雇用を政府が作ることにより、消費が落ち込むのを防ごうという策です。

MMT理論④:税金の役割=インフレ調節、貨幣に価値を与える

政府は、供給能力とインフレ率の制約の中でお金を好きなだけ借りれる。それなら税金いらなくね?と思った方もいるかと思います。MMT理論では、税金を①インフレ調節のツール ②貨幣に価値を与えるツールであると見なします。

①インフレ調節のツールとしての税金

総需要>総供給能力 となったときインフレが起き、それが行き過ぎるとお金が紙クズ同然になってします。こんなときには、増税をすることによって需要を抑えることができます。

逆に、総供給能力>総需要 となり、消費が落ち込んでいるときには、減税をすることによって需要を増やすことができます。

  • 需要>供給能力 (インフレ) → 増税する → 需要↓ → インフレ↓
  • <li>供給能力>需要 (デフレ) → 減税する → 需要↑ → デフレ↓</li>
    

②貨幣に価値を与えるツールとしての税金

税金はその国の通貨でしか支払うことができません。このことが「自国の通貨に価値を与えることになる」MMTでは考えます。現在、日本の税金を米ドルや仮想通貨で納めることはできません。しかしこれが可能になると、米ドルや仮想通貨で給料が支払われたり、買い物ができたりして、日本円を誰も使わなくなるかもしれません。すると、流通する通貨を日本政府がコントロールできないため、財政政策をすることが不可能になります。日本政府に米ドルやビットコイン発券権はありませんから。。。

MMT理論を適用できる条件

ここまで、MMTの考え方をみてきましたが、どんなときに適用することができるのか。改めて整理していきます。

条件1:供給能力の安定

総需要>総供給のときにインフレが起こり、それが行き過ぎるとお金が紙くずになります。供給能力が不安定だと、このバランスを保つことができなくなるので、お金を大量に借りたときに極度のインフレが起こる可能性が上がります。その国の産業構造が、少ない種類の農産物や鉱山資源に依存するモノカルチャー経済である場合に、供給能力が不安定になる傾向があります。

条件2:インフレ率

お金を借りて、流通量を増やすときに、常に気にしないといけないのが「インフレ率」。いくら供給能力が安定していても、お金を増やしすぎると極度のインフレが起こります。

条件3:変動相場制の通貨発行権

MMT理論は「自国通貨での借金」について説いた理論です。自国通貨の場合は、その国の中央銀行(日本では日本銀行)が国債を買い取ることによって、お金を増やすことができます。しかし他の国の通貨ではそうはいきません。通貨発行権がないからです。

日本銀行は、日本政府の子会社なので基本的には日本政府がお金を借りたいときに借りることができます。さらに通貨発行権も持っているので上限はありません。しかし他の通貨の場合は通貨発行権がないので、借りることができる上限があります。これは、為替レートやその通貨の発行権を持つ政府によるので、自国通貨のように自由に借りることはできません。

変動相場制

変動相場制:需要と供給の関係で為替レートが変わること。

変動相場制の逆=固定相場制では、自由にお金の量を増やしたり減らしたりすることができません。

固定相場制:別の通貨に対して、通貨の価値を固定

この例では「円」を増やすことは、同時に「ドル」を増やすことにつながります。そのため、固定相場制ではお金を自由に増やすことは制限されます。

日本政府が自由に「固定相場制の円」を増やすと、同時に「ドル」の量も増え、極度なインフレが起きる可能性があります。そのため、アメリカの中央銀行は、日本政府に対して「円を発行できる上限」を設けます。

日本円は昔固定相場制だったのですが、現在は変動相場制をとっているので、自由にお金を増やすことができます。現在固定相場制をとっている国には、中国、カンボジアキューバなどがあり、米ドルに対しての相場を固定しているケースが多いです。

これらを踏まえると、MMTに適していると言える国は、アメリカ・日本・イギリスといったところです。

MMT理論の裏付け→日本のケース

MMT理論を裏付ける証拠として、日本のデータが使われることが多々あります。

日本政府は、予算の30%ほどを国債によってまかなっていて、その半分程度を、日本銀行保有しています。 日本銀行国債保有は年々増えているのですが、インフレは起きていません。これが、MMT理論の「インフレの制約の中では、お金をいくらでも借りることができる」ことの裏付けの1つとされています。

政府予算の歳入(左)日本国債の長期保有者(右)。どちらとも財務省ホームページ(https://www.mof.go.jp/)より引用

MMT理論への反論

MMTは革新的な経済学理論であるため、たくさんの反論を受けています。

MMT反論①:ギリシャ財政破綻したが?→自国通貨じゃない

直近で経済破綻した国といって、思い浮かぶのはギリシャかと思います。MMTが正しいはずなら経済破綻はあり得ない。もっとお金を増やせばよかったのに。と思うかもしてませんが、ギリシャは自国通貨を持っていません。ユーロ圏に属している国は、共通の通貨ユーロを使っていて、ギリシャ政府が自由にユーロを増やしたりすることはできません。そのため、借金を返すことができなくなって財政破綻という結果になりました。

MMT反論②:インフレ率は本当に調節可能?

MMT理論では、「インフレをお金の量によって調整することができる」ことを前提にしています。

  • 物の価値>お金の価値 → インフレ↑ → お金の量を減らす → インフレ↓
  • <li><strong>お金の価値>物の価値 → デフレ↑→ お金の量を増やす → デフレ↓</strong></li>
    

しかしこれに疑問を抱く人は多いです。インフレは不確定要素で、お金の量のみで決まっているわけではない。このような複雑なものをコントロールするのは不可能であるということです。

これに関して、MMTは今のところ、反論することができないと思われます。なぜなら十分なデータがないからです。MMTは日本でインフレが起こっていないことを裏付けの1つにしていますが、今後日本に何が起こるかわかりませんし、他の国でのデータも不足しています。

経済物理学者の高安氏は「インフレが進行することにより、富裕層が円を売り、円の価値が暴落する危険性」を指摘しています。

「インフレ率をコントロールできるか否か」が今後MMT理論の真偽の決め手なるでしょう。

まとめ

MMT理論とは

  • 政府は自国通貨でお金を借りまくることができる
  • <li>お金を借りるときの制約はインフレ率</li>
    
    <li>財政拡大によって政府が需要を作る</li>
    
    <li>税金の役割はインフレの調整と、通貨に価値を与える</li>
    

MMTは斬新な理論として注目されているが、

  • 理論を裏付けるデータの少なさ
  • <li>インフレーションの不確定性</li>
    

が課題である。

おすすめ書籍、コンテンツ

中野剛志氏による、MMT解説本。経済学が全くわからない人でもスラスラ読めます。

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