経済学って何? 核となる考え方を解説

この記事のターゲット:大学で経済学部に進学しようと思っている方。経済学がどういう学問なのか、ざっくり知りたい方。

皆さんは、経済学と聞いて何を連想しますか。

  • お金についての学問。
  • 潰しが効く。
  • 文系の中で一番理系に近い。

などのイメージを抱かれるかと思います。

数学や理科、英語などの科目と違い、経済学は高校ではあまり扱われません。政治経済の授業に少し出てくる程度です。(政治経済の経済分野は経済学というより「政治」の中の「経済分野」といった印象を持ちました。)

今回は大学で経済学を専攻しているボクが、「経済学とは何か」を大雑把に説明していきます。なおこの記事では、細かな説明は一切省き、経済学の核となる考え方のみ説明していきます。

経済学とはなんなのか

経済学とはずばり、

限られたリソースで最大限の効用を実現する

ことを研究する学問です。これだけ聞いても、抽象的でいまいちピントこないかと思いますので、具体例を見ていきましょう。

  • 限られた時間で、最大限テストの点数をとる。
  • 限られたお金で、最大限の幸福感を得る。
  • 限られた従業員で、最大限の製品を生み出す。
  • 限られた資金で最大限の利益を生み出す。

このように、

リソース=(時間,お金,従業員,資金) 効用=(点数,幸福感,製品,利益)

と置き換えることによって、ずいぶん具体的になるかと思います。効用というのは「幸せ度を測る数値」と定義されるのですが、「幸せ度」というのは測りようがないので、利益や時間といった測定可能なものに置き換えられることが多いです。

「限られたリソースで最大限の効用を実現する」

これが経済学の最終目標。 この目標を達成するため、経済学はさまざまな分析ツールを発明、もしくは他学問から輸入してきました。

経済学といえば、マーケットを研究したり、政策の費用対効果を考えたりといったイメージが強いかと思います。しかし本来はこの要件を満たせば、経済学なのです。そのため経済学はあらゆる学問との親和性が非常に高いです。

例えば、神経科学と経済学を融合させた神経経済学。心理学と経済学を融合させた行動経済学など。

経済学の分析術

ここからは、経済学がどのようにして「限られたリソースで最大限の効用を実現する」方法を見つけていくのか、具体的に見ていきます。

1.大胆な仮定

経済学は様々なものを研究対象にしますが、それらはマーケットなど複雑なものが多いです。マーケットとは商品を取引する場所。本来マーケットを分析するためには、参加者一人一人の好みや家族構成などなど膨大な情報が必要になります。しかし、そんな情報を集めるのは不可能です。そこで経済学では大胆な仮定=(人は常に効用を最大化するように行動する)をします。

一人ひとり違う価値観があって、それによって人生の選択をしている。しかしそれらは、定量化できないし、仮にできたとしても情報量が多すぎる。そこで経済学では、みんな自分自身の効用についてよく知っていて、自分がした選択は常に効用を最大化すると仮定します。

他にも、人の行動について分析するために、「この世界にもしも商品が2つしかなかったら」という仮定をすることもあります。ドラえもんもしもボックスばりですね。この仮定は「商品の価格が変わったときに、人々はどのように反応するか」分析するのに役立ちます。

例えば、「この世界に牛肉と鶏肉しかない」と仮定します。牛肉の価格が、何らかの原因によって急上昇(1kg1万円とか)。この時人々はどうするでしょう。おそらく鶏肉を買います。牛肉と鶏肉は同じ肉で、お互いに代用できるからです。 一方「この世界に牛肉と掃除機しかない」と仮定するとどうなるでしょうか。牛肉の価格が上がったからといって、掃除機を買い始める人はなかなかいません。これは牛肉と掃除機がお互いに代用できないからです。

2.数学

大学から学ぶ経済学では、とにかく文字がたくさん出てきます。これは、経済モデルを作るにあたって、未知な数を文字で置き換える、代数学的な発想です。先ほど効用という言葉が出てきましたが、この効用も数値として扱うことができないので、とりあえずU (Utilityの頭文字)表されることがあります。

これによって例えば、「お金があるほど幸福になる」という仮定を、

$$U=kY$$ $$Uは効用、kは比例定数、Yは収入(income)$$

このように数式として扱うことができます。

数式で扱うメリットは、数学的な分析方法を使うことができる点にあります。その代表的な例が微分です。微分法を上の式に使うと、「ほんの少しの収入の増加が、効用をどれだけ増やすのか」を調べることができます。

実際に上の式をYで微分してみると

$$U'= k$$

となります。これが意味するのは、「ほんの少し収入が増えたら、効用はkだけ増える」ということです。つまり収入が10万円のA君が10万円もらえた時と、収入が1000万円のB君が10万円もらえた時、A君とB君は同じくらい幸福度が上がるということになります。(この仮定では)

収入が100%増えたA君と、0.1%くらいしか増えていないB君の幸福度が同じだけ上がっている。これは直感に反します。そこで次のような仮定をして、同じように微分してみます。

$$U=logY$$ $$U'=1/Y$$

となります。この式が意味するのは「ほんの少し収入が増えたときの幸福度の増加は、現在の収入による」ということです。「収入が少ないほど、その幸福度の増加は大きく、収入が大きいほど幸福度の増加は小さい」。これは直感通りかと思います。

左がU=kY$$, 右がU=logYを表す。右のグラフでは、収入が上がるにつれて、効用の上昇具合が減少していることがわかる。

もちろん、どちらの式も勝手にボクが作った関数です。実際に効用と収入の関係を調べるには、膨大なデータを使って比例定数などを求めることが必要です。このようにデータを元に、法則性などを見つけ、それをモデル化するのが計量経済学です。

3.統計学

統計学とは、データを収集してそれから何か予想するという学問。その応用範囲は広く、心理学や物理学そして経済学まで。

経済学で統計学が使われる場面はたくさんあります。例えば、「消費税増税が、1年あたり国民が旅行に使う金額にどれだけ影響を与えたか」調べたいとき。

こんなときに使うのが、回帰分析。回帰分析はデータを元に相関関係についての式を求めることができます。

(旅行に使う金額) = 100,000円 - 3000×(消費税率)

この式は、消費税率が1%上がるにつれて、旅行に使う金額が3,000円減少するということを表します。この式を求めるために必要なデータは、「ある年の旅行に使われた金額の平均」と「その年の消費税率」です。

しかし、ある年に旅行に使われる金額が消費税率だけで決まるというのは、なんだか違和感を感じます。その年に疫病が流行ったり、景気が悪かったら、いくら消費税率が低くても旅行する人は少なくなると予想されます。このように複数の出来事が、ある結果(この例では旅行金額)に影響を及ぼしていると仮定するときにも、回帰分析を使うことができます。

ここでは、旅行に使う金額は景気と消費増税、そして天候に左右されると仮定します。先ほどと同じように式を求めてみると、

(旅行に使う金額) = 60,000円 + 5,000(景気指数) + 3,000(晴れの日の日数) - 4,000(消費税率)

のようになります。この式を求めるのに必要なのは、「ある年の旅行に使われた金額の平均」「その年の消費税率」「その年の景気指数」「晴れの日の日数」のデータです。

これらはボクが適当な数字を当てはめて作った式ですが、実際のデータを用いた回帰分析は政策の決定に有効です。

4.歴史

経済学では過去に起こった出来事から、様々な理論を展開していくことが多いです。物理や化学では実際に実験をすることによって理論が正しいか確かめることができますが、経済学ではそうはいきません。それは人間を実験対象とするからです。

太陽の光が、植物に与える影響を調べたいときには、同じ種類の2つ植物を用意して、1つの植物をアルミホイルで包み、光を遮断する。中学理科の代表的な対照実験です。しかし、東日本では増税して、西日本では税率を変えず、それぞれの経済への影響を観察するなどといったことは、不可能に近いです。東日本の住民の生活に多大な影響を及ぼしますし、西日本に移り住む人が出てきたりして、実験にならない可能性もあります。

こんなときに有効なのは、過去の出来事を振り返り、実験っぽいものを探すことです。「たまたま同じよう性質を持った都市Aと都市B。ある日都市Bのみが増税 このような状況が過去に起こっていれば、それを参考に増税による経済への影響を観察することができます。これを自然実験と言います。

他にも、過去の景気変動からパターンを見つけ、今後の景気を予測するといったことも行われています。建設物の需要の循環を表したクズネッツの波や、技術革新の循環を表したコンドラチェフの波も、過去に景気がどのように動いているか観察することによって、導き出されたものです。

この記事では、経済学の核となる考え方や分析術を見ていきました。経済学は「金利」「投資」「需要供給」など少し固いイメージがありますが、そんなことはありません。限られたリソースで最大限の効用を実現するための学問です。様々なものを研究対象にすることができるので、「何をやりたいのかわからない人」には最適の学問なのかもしれません。

[voice icon="https://hikitaro.com/wp-content/uploads/2019/06/40089718.2b41005ba0d1899a3f0bf130c1f85933.19060315-1-e1561226485604.jpg" name=“ユウガ” type="l"]ボクなりに経済学とは何かをまとめてみました。経済学の定義については、様々な解釈があるので注意が必要です。[/voice]